『魚島』を写真と紀行文で紹介 | 島プロジェクト

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燧灘に浮かぶ、名実共に魚の島
魚島Uo-shima

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▲静かな魚島港(篠塚漁港)の午後
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▲のどかな空気が漂う漁協での作業
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▲港周辺に見られる、たこ壷の山
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路地に点在する共同井戸
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島で唯一の年中無休の商店だった
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島らしい路地は魚島の特長
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財宝伝説、篠塚さんへの入口
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島の栄華を偲ぶ名所、亀居八幡神社
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▲他の島では見られない風景

魚島は、高井神島と無人島の江ノ島・瓢箪島などで成る魚島群島中心の島。合併分離の歴史の中で、西日本一小さな村になったこともあったが、現在は上島町に属する。因島の土生港中央桟橋より、高速船『ニューうおしま2』で片道1,000円。弓削島、(1、3便は豊島へ寄港)高井神島を経由して魚島まで約1時間の船旅。生名島、佐島、弓削島と、かつて巡った島を船窓から眺める気分は格別。燧灘に出ると景色も変わり、離島へ向っている感じも増し、気分が高揚する。

港に入ると桟橋正面に魚島開発総合センター(役場)のビルが建ち、港を背に見渡すと観光センター、公共住宅、福祉センター、プラントとコンクリートの建物が並ぶ様は、離島としては少し異様な光景。魚島開発総合センターの中に魚島郷土資料館があるのだが、土・日・祝日が休みというのは、どうにかならないものか。役場内にあるから休み。いつ誰に見せるのか。お役所仕事と言わざるを得ないのが残念。乗って来た船は、次の出発までの休憩に入り、港は静けさに包まれた。

漁協でひとり網の手入れに勤しむお爺さん。使い込まれた竹製の輪に、新しい網をつけているのだという。網は定置網用で特産のタイを狙うものだろうか。ここはデビラ(タマガンゾウヒラメ)が有名で、港に広がるデビラ干しの風景は冬の風物詩となっている。たこ壷漁も盛んで、夏と冬の漁期を外せば、港内に並ぶ多くのたこ壷を見ることができる。のりも獲れ、濃いめの味付けという味付魚島のりが、お薦めと島の方に伺った。港を歩き、漁業で成り立ってきたことを感じた。

路地巡りをしていて気づいた特徴は、平地の少なさ故か、集落の中に小さな墓地が点在すること。そして井戸が多いこと。離島では水の問題がついて回る。魚島では、井戸、天水、簡易水道、貯水タンク増設など、水を確保する努力を続け、生活用水を購入するまでに至る。水不足は徐々に軽減され、平成9年から海水淡水化施設の稼働で、完全給水となった。現役の井戸はたっぷりと水を汲上げ、洗い物に使われていた。苦労の歴史を知ると、井戸の存在が違って見えてくる。

狭く細かく張り巡らされた路地は、急坂あり急階段ありで、なかなか手応えがある。港近くの路地で、この5月閉店まで唯一、年中無休で営業していた商店を見つける。島の子供達を思ってか、閉店後も開店日時を定め、アイスクリームだけ売っているようだった。島中いたるところで石仏を見かけるのは、それが島四国八十八カ所を構成している為。1番札所は、集落を見渡す位置に建つ道福寺。本堂右のガラス戸の中を覗くと、色白で目鼻立ちの良い地蔵菩薩を拝むことができる。

道福寺から見上げるような階段と坂の登り、山腹にある魚島小中学校へ向う。モダンな校舎に体育館、運動場を挟んで別館が建つ敷地は、手入れが行き届き、綺麗で気持ちが良い。平成25年度の在校生は、中学生2名、小学生6名。秋の運動会は島民総出となるそうだ。午後の陽射しを受け眩しい運動場に、島の宝を見つめる多くの温かい眼差しが想像できた。集落から大きく山腹を巡り、学校に繋がる舗装路。その坂を登り、村上水軍の見張所があったという篠塚公園へ向う。

公園への入口は舗装路から3カ所あるが、一番高い場所に位置する入口が最良。入ってすぐ五輪塔があれば正解。この場所が『篠塚さん』と呼ばれ島民に親しまれているのは、南北朝時代の武将篠塚伊賀守重廣が、伊予瀬田城からの撤退時に魚島(当時の名は沖の島)に上陸。島の困窮時に、ここを掘るが良い。と言い残したという財宝伝説がある為。桜の名所となる園内には、篠塚伊賀守の石碑があり、神ヶ市古墳があるそうだが、古墳は何処にあるのか残念ながら分からなかった。

篠塚さんから、新しい石材が目立つ石鎚神社を経て、創建300年という亀居八幡神社へ。神社は島の大きさに対し、驚くほど広い平坦な境内を持つ。参拝すると、その規模に圧倒されると共に、島の繁栄を伺い知ることができる。また、境内には篠塚伊賀守にまつわる、鎌倉時代のものと言われる法篋印塔がある。港まで下り西へ向うと、沖の小島へ続く消波堤、大木海水浴場。波対策として必要なのだろうが、島外者から見ると人工物に囲まれた海に魅力は感じられなかった。

魚島は路地の作り出す島らしい景観と、ビルの建ち並ぶ埋立地や、公共事業の目立つ景観が同居する珍しい島。診療所やデイサービスセンターもあり、離島の憂いは少ない。人を呼ぶ豊かな資産があっても、景観を維持し、来島者に対応する人手不足というのが現状のように見えた。今までの投資を遺産にしない為には、余り気味の住宅設備が埋まることが必要だろう。適正か過度か、公共投資を今判断することはできない。豊かな時間の流れに身を委ねるには最適の島だけに、離島振興のよい指標になることを願うばかりだ。

文・写真/ナワタミツル
参考資料/日本の島ガイド シマダス

-魚島DATA-
◎所在地/愛媛県越智郡上島町
◎面積/1.37k㎡
◎宿泊施設/あり(要予約)
◎お食事処/あり(要予約)
◎公衆トイレ/あり
◎駐車場/なし
※因島・土生港に有料駐車場あり
◎島内交通手段/なし
◎備考/食物は乗船前に用意が必要

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