『浮島 & 頭島』を写真と紀行文で紹介 | 島プロジェクト

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ReportNo-24.png浮島
天日で映えるミカンとイリコの島
浮島 & 頭島Uka-shima & Kashira-jima

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▲日前港で給油中の町営定期船「ひらい丸」
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▲暇なのか、家から出てきてついてきた犬
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▲日当りと眺めの良い頭島のみかん畑
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特産のいりこを干すためか瓦のない屋根
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樽見港を埋める漁船に活気を感じた
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現在の在校生は9人という浮島小学校
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島の石垣を賄ったという花崗岩の石切場
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今も残る石垣が昔の海岸線を教える
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▲静けさが心地良いおかげの浜

浮島は屋代島(周防大島)の日前(ひくま)沖約5kmに浮かぶ。大島大橋で屋代島へ渡り、437号線で日前へ。国道から入ったところに日前港はあるのだが、島外者にとっては見つけ難い場所。小さな案内板に従って駐車場に車を止め、防波堤の切れ目から桟橋が見えるまで、港に着いたという気がしなかった。町営の定期船は1日4往復。出港の11時30分まで時間があったので、のんびりと港で過ごす。防波堤に地元の釣人の姿が多く見られ、のどかな休日の風景を作っていた。

船は江ノ浦、楽ノ江、樽見の順で寄港。日前港から乗れば、料金はどの港で降りても320円。効率を考え北側の樽見で下船し、頭島を回ってから徒歩で楽ノ江、南側の江ノ浦へと戻る行程にした。乗船券は無く、船内で行き先を告げて料金を支払う。出港時間が近づくにつれて、買い物を済ませた島の人達が次々と乗船してくる。その度に会話が生まれる船内。小さな定期船が持つ温かい雰囲気が心地よい。力強く進む船の中から、後で訪れる場所を確認しつつ30分で樽見港に到着。

浮島と頭島は浮島大橋で繋がっているのだが、この農道橋の桁下が低く、漁師の方にとっては満潮時の通行に気遣いが必要で不満があるのだそうだ。橋を渡ると埋め立て地に魚の加工工場らしき建物があり、すぐに上り坂が始まる。高さを増すにつれ、視界に広がってゆく青い海が清々しい。頭島は人が住んでいた時期もあったが、今は無人島。整備された農道沿いの日当りの良い斜面に転々と農地が存在する。初夏を思わせる陽気の中、みかんの白い花があまい香りを放っていた。

頭島から浮島へ戻ると、埋め立てのせいか広々と感じる樽見の集落。人家の建つ場所が、本来の島の際なのだろう。東寄りには比較的趣のある家々が立ち並んでいる。家並の裏から法面を上がると、33体の仏像が安置される樽見観音。港へ下る坂の途中に五社神社。共に集落を見守るように高い位置に建っていた。天日干しのイリコで有名な浮島。あちこちで、イリコの乾燥棚と思われるものを見かける。天日干しのためと思われる、一部瓦のない屋根を持つ独特な家もあった。

イリコの元となるイワシの漁期は6月中旬からで、秋に最盛期を迎える。訪れた時は漁期前だが、港に多くの漁船が並ぶ風景に活気を感じた。漁業はイワシ漁だけではないが、その漁場は年々遠くなりつつあるという。島を取り巻く環境、即ち瀬戸内海の変化を話してくれた元漁師の言葉には重みがあった。浮島は合併前、屋代島と跨がり存在した橘町であったため、マンホールにその名が残っていた。ここで合併の是非を問う気はないが、旧町名が残るモノが他にも欲しいと思った。

楽ノ江は、南北にある両集落の中間に位置する。小学校の他には空き家なのか別荘なのか、人気の無い家が数軒見られるだけ。校舎前の斜面には、みかん畑が広がる。畑のどこからか聞こえてくるラジオの音は、農作業をしている証し。小学校は戦前まで山の上にあったそうで、校庭にその頃からの門柱が説明と共に記念碑として建っていた。三つの集落の中間ということで山頂にあったが、台風の度に被害に遭うのと、山道通学の苦労を鑑みて海辺へ降ろすことになったそうだ。

校舎の脇に小さな待合所があり、校庭からそのまま桟橋が繋がっている。船を下りたら学校という立地が、とても素敵に見えた。山と海に囲まれた、こんな環境の小学校で過ごしていたらと、大人であれば自分の小学生時代を振り返らずにはいられない。校舎海側の裏には、花崗岩の石切場がある。稼働中なのかは伺い知れないが、島内の石垣に使われたものは、ここから切り出されたものだと本で読んだ。樽見で石柱を何本も並べた壁を見かけたが、その石もここものなのだろうか。

山中のへリポートを経て、江ノ浦へまで戻ってきたのは最終便の出る2時間前。集落へ向おうと海辺を西から東へ進むと、桟橋のつく埋め立て地が目に入るが、物置状態であまり良い景色とは言えない。道は漁協や加工場が立ち並ぶ港側と家並みの通りへと別れ、家並み側を進むと元の海岸線を思わせる石垣の残る家があった。子供達の遊ぶ声が聞こえる道の先に港の空き地があり、そこを左に折れると鎮守の磐尾神社。季節柄、空にはこいのぼり。日本らしい風景に心が和んだ。

集落の東にある加工場と見壁山の間の道をゆくと、周りに民家もなく静かなおかげの浜がある。沖に防予フェリーがゆっくりと行き交う景色は、時間を忘れて見とれてしまう。港へ戻ると日も傾き、空き地の賑わいも消えていた。ミカンの生産やイワシを代表する漁業など、一次産業が盛んな島だと聞いていた浮島。自然の恩恵だけで成り立つ離島を歩き、それを垣間見ることができたのが今回の収穫。橋も無く、作った観光施設も無い。こういう島が元気であることが、ただ嬉しい。

文・写真/ナワタミツル
参考資料/日本の島ガイド シマダス・私の日本地図9 周防大島

-頭島DATA-
◎所在地/山口県大島郡周防大島町
◎面積/0.15k㎡

-浮島DATA-
◎所在地/山口県大島郡周防大島町
◎面積/2.30k㎡
◎宿泊施設/あり
◎お食事処/あり(予約等 確認が必要)
◎公衆トイレ/あり
◎駐車場/なし
※但し、日前港に無料駐車場あり
◎島内交通手段/なし
◎備考/食物は乗船前に用意しておくのが無難


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