『因島』を写真と紀行文で紹介 | 島プロジェクト

00-因島TOP_0372.jpg

ReportNo-17.png因島
様々な面を持つ、瀬戸内起点の島
因島/Inno-shima


01_MG_0370.jpg
▲船が往来する、見飽きぬ瀬戸内の風景
02_MG_0385.jpg
▲トンネルを抜けると静かな折古ノ浜
03_MG_0390.jpg
▲美可崎城跡からは、備後灘を一望できる
04_MG_0393.jpg
▲眺めが良い因島水軍スカイライン
05_MG_0395.jpg
▲崩れた波止。石に切り出しの痕が残る
06_MG_0407.jpg
▲鏡浦港近くにある厳島神社の境内
07_MG_0413.jpg
▲因島大橋が架かる布刈(めかり)瀬戸
08_MG_0437.jpg
▲白滝山山頂から島の北部を眺める
09_MG_0457.jpg
▲夕景から夜景も良い因島公園の眺望



因島は現在尾道市に属するが、かつては因島市として独立していた。それを支えたのは、みかんを中心とした柑橘栽培と造船業。古くは村上水軍の本拠地として、また碁聖と呼ばれる本因坊秀策の出身地で、島内の囲碁愛好者は人口の1割以上の3500人という、囲碁の島としても知られている。しまなみ海道で因島北ICで下りると山の中。残念ながら島に着いたという気はしない。317号線で海へ出ると、目の前には生口島。土生港方面へ向い、島を半時計回りに巡ることに決めた。

土生港の後ろに標高207mの天狗山が聳える。まずはそこにある因島公園へ登ることにする。駐車場から山道を登ると展望台がある。しまなみ海道で繋がる生口島、大三島。生口島。岩城島、佐島、弓削島と見渡せる眺望は、瀬戸内の縮図のよう。桜の樹も多く、春に訪れるのも良いだろうと思った。足元に広がる町並みと、島の緑と海の青とが作り出す対比は、いつまで見ていても飽きない。大きい島だけに、回りきれなくなるのではないか。焦燥感が背中を押し、家老渡へ向う。

家老渡は島の南端にあり、弓削島へ渡る船が出ている。埋め立て地を抜けると突然現れる港は、2年前に訪れた時と何も変わらない印象だった。北上して三庄の小さな港に車を止めた。綺麗に拡幅された道を避け、小道を選んで歩く。かつては小島か、岬であったろう小山を穿ってトンネルがあり、抜けると折古ノ浜へ出た。歌詞に登場するため、一部の人には有名な海水浴場。市営でなくなりはしたが、自然海岸の砂浜と沖に広がる風景は、変わらぬ魅力を放っているのではないだろうか。

三庄湾の南側に伸びる岬へ向う。岬(三ケ崎)の突端が地蔵鼻と呼ばれているのは、悲しい伝説の残る地蔵岩があるから。伝説について詳しくはここで述べないが、女性の願い事を叶えてくれるそう。そして伝説にまつわる城が、地蔵岩の上にある美可崎城。小さな看板を頼りに進むと、城跡には東屋とベンチがあるのみで、城らしい遺構は無い。しかし見晴らしの良さに、通行税徴収を目的とした城の場所だと頷け、眼下に広がる備後灘を眺め、水軍気分を味わうことはできる。

三庄湾を横切り、向ったのは椋浦港。椋浦の輸送力は因島一、広島藩一という文政年間(19世紀初頭)の記録も残っているほど、廻船(海運)業で栄えた港。しかし港に千石船が並び、民家300軒と言われた頃の名残を現在の集落に見つけるのは困難だ。埋め立てで疑わしい海岸線が多い島の中、天然の良港であったことは、静かな広い湾内を見れば伺い知ることができる。強く印象に残ったのは、引き潮の為に見る事ができた壊したのか崩れたのか分からない古い石積みの波止。

鏡浦港の脇には神社がある。地図には厳島神社とあるが、入江を跨ぐようにかかる参道に立つ鳥居の額束には、なぜか御手洗神社とあった。境内は小さな鳥居があったりと、不思議な空間。コンクリートで高く長く補強された波止の内側に、数隻の漁船。昔は多くの船が繋がれていたのだろう。三庄から通ってきた因島水軍スカイライン(県道366号線)は、山の中腹を走り眺めも良い。島の中でも椋浦、鏡浦は静かな場所。島でのんびり過ごしたいのであれば、東部をお勧めしたい。

外浦(とのうら)を過ぎ、海沿いの道317号を北上し、しまなみ海道をくぐって因島大橋記念公園へ。駐車場から歩いてゆくと、布刈瀬戸と明治27年完成の大浜崎灯台が見下ろせる展望台に出る。足元には可愛らしい建物の旧大浜崎船舶通航潮流信号所。明治43年に建てられたもので、全国で唯一現存する木造信号所。現在では灯台記念館という名称だが、残念ながら中には入れない。県指定重要文化財でもあるので、致し方ないところか。近くに検潮所もあるが、手入れはされていないようだった。

標高227mの白滝山にある五百羅漢へ向う。村上水軍の村上吉充の建てた観音堂が始まりで、島内出身者の柏原伝六とその弟子達が、五百羅漢を作ったと伝わる。山頂近くの駐車場からは徒歩で登る。参道から頂上へ約700体の大小様々な石仏があり、並ぶ様は壮観。島の北部なので、南の因島公園とは違う島の風景を見せてくれ、島の大きさを改めて感じる。訪れたのは夕暮れ時。西日を浴びて輝く石仏群と海を共に見下ろす眺めは、なんだかとてもありがたいように感じられた。

夕景を撮る為に最初に立ち寄った因島公園に戻る。夕闇に浮かぶ灯りを見下ろしながら、この島での一日を振り返る。造船所を中心に発展した西側と、どこか懐かしさの残る東側。島の全てを回る事ができなかった為、何処がこの島らしい所であるのかを判断するには、何度も足を運ぶことが必要だろう。言えることは、多くの商業施設や雇用を生む企業を抱えることで、周辺諸島に対する存在も大きく、現在の人口を保ち栄え続けることが、この島の宿命だということだろうか。


文・写真/ナワタミツル
参考資料/日本の島ガイド シマダス

-因島 DATA-
◎所在地/広島県尾道市
◎面積/34.97k㎡
◎周囲/31.9km

◎宿泊施設/多数あり
◎お食事処/多数あり
◎公衆トイレ/多数あり
◎駐車場/あり
◎島内交通手段/あり
・バス ・レンタサイクル(コチラを参照)
◎備考/コンビニも多い


PhotoGallery-Jump.png

>>スマートフォンの方はコチラをクリック


Innoshima-map.jpg

● 観光情報 & アクセスに関してはコチラをチェック → 因島観光協会
● 因島の近況はコチラをチェック face book

bk2_prev.gif

bk2_next.gif