『岡村島』を写真と紀行文で紹介 | 島プロジェクト

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ReportNo-12.png岡村島
人情と家並みに温かさを感じる島
岡村島Okamura-jima

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▲集落内には立派な瓦屋根が多い
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▲島の生活を支え続けた共同井戸
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▲訪れたのはデコポンの収穫時期
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▲鏝絵を見つけて歩くのも楽しい
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▲丁寧な修繕が至る所で見受けられる
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▲1階が岡村小学校で2階が関前中学校
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▲路地歩きには色々な発見がある
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▲港には大小様々な漁船が並んでいた
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▲展望台から見る夕暮れの迫る岡村港

安芸灘とびしま海道の現終着点となる岡村島。愛媛県の島だが、橋で繋がるのは広島県のみという特異な島。県境に捕われない協定で、隣の大崎下島と結びつきもある。以前は隣接する小大下島(こおげしま)、大下島(おおげしま)の有人島と、その属島で構成される関前村であったが、2005年に今治市と合併。関前とは水軍が帆別銭を取る関所の手前に位置した為で、岡村の名は島の形が丘陵のような為という。3度目の来島になるが、ゆっくりと集落を回るのは今回が初めて。

港の西側に位置する779年創建という姫子島神社に参拝。海に近い鳥居は空が開けていて気持ちが良い。瀬戸内で弓を用いる神事は色々あるが、ここでは弓祈祷という名で毎年2月11日に行われている。これからも長く続いて欲しい。路地を歩いていると、共同井戸を見かける。水があったから、人が島に住み始めた。ということを考えると、一つの井戸にも島の長い歴史を感じる。石垣の上で甘夏がたわわに実る路地を辿るように奥へ進んでゆくと、行き止まりに作業場があった。

索道(みかん畑からの搬出用ロープウェイ)の台座の下にある作業場で、デコポンを選果中の方に索道について聞いてみる。昔の木箱ならば3箱積めたそうで、送り手と受け手に一人ずつ作業員が必要であり、運用は危険を伴ったそう。その点モノレールならば一人でも作業ができると、索道が消えていった経緯を教えていただいた。石垣を飲み込み、山に返りつつある斜面の高見を指差し、みかん栽培全盛期の話を聞く。暫く立ち話をした別れ際に、お土産にとデコポンを頂いた。

板壁や土壁などが多い家並みの続く路地が、落ち着きと温かみを感じさせる風景を作る集落。見上げれば重々しく立派な瓦屋根が多く、丁寧に見てゆくと色々な装飾瓦が見られるのも面白い。また、白壁を残す家の中には漆喰の凹凸で描く鏝絵(こてえ)を見つけることもでき、路地歩きの見所のひとつと言える。高い壁に小さな窓が付くのは、みかん農家の多くが持っていたというみかん蔵。それが集落内に何カ所か残っていて、みかん作りが盛んであったことを今に伝えていた。

昔ながらのトタンの波板や、カラー鋼板で外壁を修繕してある建物をいくつも見かけるが、その直し方が丁寧であり、装飾などを入れる細かな配慮を感じる。古い木造家屋に入った新しいアルミサッシや雨戸があまり気にならないのも、計算の上のことなのだろうかと不思議に思う。元を正せば鏝絵など繁栄を誇示する家の競い合いから始まったものかもしれないが、それが独特な美意識となって伝わり、この島ならではの調和のとれた景観を生み出したのではないかという気がした。

関前地域おこし隊の方々が店を開いたとのことで、そこへお邪魔する。海沿いにある空き家の古い内外装を極力活かして改修されていて、浮いたような違和感がない。ある物を利用して新しいことを始め、定住者が増えるということは、島にとって最善の策と思われた。店を出て今度は東側の集落へ。木野山神社で時報塔を見て、延命地蔵と集落の一番奥にある小・中学校へ向う。岡村保育所、岡村小学校、関前中学校が同じ敷地にあるが、それぞれ門を構えているところが面白い。

東側の集落は西側より路地が細かく走っている。軒下に民具を見つけ牛乳箱を見つけ、行きつ戻りつ歩いていると日当りの良い旧家墓石群と呼ばれる一角に出た。墓地というより遺跡のようで、明治大正という年号が刻まれた小さな墓石が、当時の慎ましい生活を想像させた。海へ出て整備中の雁木に沿って、車を止めた港の東端へ戻った。港の一番外の防波堤に、漁場名を活かしたブランドを立ち上げた関前村漁協のいけすがあった。島の漁業に活気を感じられるのは嬉しいこと。

集落を離れて、島の南端にある梅や桜の名所観音崎へ。斎灘を見渡せる観音崎は水軍の城があった場所で、突端に常夜灯があるのを併せ、古くから海上交通の要所であったことが分かる。首なし地蔵、一願地蔵、歯痛地蔵、御手洗の遊女を供養する様々な地蔵が点在し、それを結ぶ散策道が綺麗に整備されている。道沿いには夜桜を彩る提灯が準備されていたが、蕾は未だ堅い状態で梅が見頃を迎えていた。傾いてきた陽が対岸の大崎下島にかかりそうな中、ナガタニ展望台へ登る。

島内には正月鼻古墳公園やナガタニ展望台、瀬戸内海国立公園の観音崎という観光場所あるが、この島の魅力は何と言っても集落にあるように思われた。どこか懐かしい家並みの中、細かな路地を気ままに散策すれば、人それぞれの持つ情景に出会えるのではないだろうか。柑橘栽培と漁業という昔ながらの産業と、港に寄り添い広がる古い家並みという、瀬戸内の島らしい情緒が残る岡村島。とびしま海道に乗ったのならば、一番先にあるこの島まで行かれることをお勧めしたい。

文・写真/ナワタミツル
参考資料/日本の島ガイド シマダス

-岡村島 DATA-
◎所在地/愛媛県今治市関前岡村
◎面積/3.13k㎡
◎周囲/11.1km

◎宿泊施設/あり
◎お食事処/あり
◎トイレ/あり
◎駐車場/あり
※関前開発総合センターに駐車場あり
◎島内交通手段/なし

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● 観光情報 に関してはコチラをチェック → 愛媛県今治市関前諸島のホームページ『きないやせきぜ』
● アクセスに関してはコチラをチェック 安芸灘とびしま海道『交通アクセス』ページ
お得情報/土・日・祝祭日に行かれる方はコチラをチェック 安芸灘大橋有料道路回数通行券助成事業

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