『佐木島』を写真と紀行文で紹介 | 島プロジェクト

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ReportNo-04.png佐木島
駅から近い、季節楽しむ行楽の島。
佐木島Sagi-shima

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▲第二かんおん(左)と向田港行き幸運丸
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▲乳牛が飼われていたという牛舎
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▲旧鷺浦小学校周辺には石垣が多い
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▲ランドマークとなる安楽寺山門から
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▲海沿いに特産品を育む畑が広がる須ノ上
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▲島でお大師さんと呼ばれる八十八カ所巡り
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▲島を運命づけた磨崖和霊石地蔵
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▲干拓地を抜ける水路。生口島が見える
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▲河口に並ぶ船。島に漁船は存在しない

三原港から佐木島へ向うフェリーは2航路。向田港行きと、鷺港経由で因島まで行くもの。鷺港から南下する予定なので、後者第二かんおんを選ぶ。以前、佐木島を訪れたのは、桜の咲き始めた2008年4月4日。今回は夏真っただ中の8月。フェリーは舷側に提灯を提げた納涼船仕様で、夏気分を盛り上げる。乗船時間は25分。港から海へ出るまで、工場沿いに水路のような区間を進む間がもどかしい。船首が右に向けば目指す佐木島が見え、やっと瀬戸内海らしい風景に包まれる。

鷺港に駐車すると、大野浦海水浴場が近い為か海水浴客を見かける。泳ぎたくなる天気の中、まずは佐木地区を巡ることに。集落内を巡る時、山腹に見える安楽寺の山門が目印になる。縦に横にと小道を折れて歩き回っても、自分の立つ位置を座標のように確認できるのは有難い。塩田跡地の傍らから海へ出ると、沖には細島と小細島。海を眺め潮風を心地良く受けていると、『トライアスロンさぎしま大会』に向けての練習中と思われる自転車が、海沿いの道を通り過ぎて行った。

1990年に島の活性化を目指して始まったトライアスロンは、島民総出と言われるほどの熱意で運営されている。近年は参加者も400人近く、継続性があり、島おこしの成功例と言える。また、佐木の南にある狗山から大平山のピークを越え、向田まで続く『さぎしまアルペンルート』が整備され、登山も楽しめるようになった。南北の港を繋ぐ行程なので、島を縦断し、そのまま帰ることも可能。駅からの利便性も高い佐木島は、冬場の登山候補地になるのではないだろうか。

狗山登山口近くにある比呂神社は、島内最古の神社。両端が反った明神鳥居なのは、元が広明神だから。前回行けなかった場所、見落とした物の発見等、佐木地区の半分は新鮮な感覚で回ることができた。そんな中で牛舎のような建物を見かけた。近所の方に伺うと、以前は乳牛が飼われていたという。島内にその牛乳ブランドがあったわけではなく、出荷専門だったそうだ。旧鷺浦小学校の周辺では、石垣を多く見ることができ、これもまた新鮮に目に映った物のひとつとなった。

小学校から安楽寺へ向い石段を上る。山門は対岸の三原城から移築された御成御門で、市の重要文化財。佐木から須ノ上へ向う道からは、陸地のように大きく横たわる因島が見える。須ノ上では恵美須神社を起点に集落内を歩くことに。海沿いに広がる平地の歴史を遡れば、島を支えた塩田。現在は、そこに島を代表する特産物のメロン、わけぎが栽培されている。家構えや風景の端々に、農業という言葉を感じるこの地区に、さぎしま八十八カ所お大師さんの1番と88番がある。

向田では、旧向田小学校校舎を利用した『さぎしまふるさと館』に入ることができた。手作り感あふれる館内展示の中、個人的には船舶産業展と郷土資料が興味深かった。懐かしい匂いのした学校から、前回立ち寄った向田八幡神社へ行ってみると、変わらぬ風景がそこにあった。石段から遠く、生口島・高根島間に架かる黄色い高根大橋が見えた。高根島を訪れた3年前を思い出しつつ、しばしその風景に見入った後、磨崖和霊石地蔵のある向田港へ。目印は道路に並ぶお地蔵様達。

磨崖和霊石地蔵(まがいわれいしじぞう)は岩に彫られていて、満潮時には首まで海に浸かることで有名。訪れた時間は潮が引き切っていた為、近くに寄ることができた。この地蔵の彫られた岩に、殺生を禁じる文章が刻まれている為、殺生禁断の島となり、漁師がいない時期があったという。なぜそうなったかの理由は不明。最初、殺生禁断は地蔵のある周辺だけで、その後全島に及んだというのだから、よほどのことがあったのだろう。島に漁に関わる場所が無い理由が頷ける。

向田内で港から木造二階建ての旧農協近くまで移動。陽が傾く中、路地歩きを始める。海辺に開ける空間は、割石島までを埋め立てて作った扇浜塩田の跡地。そのほぼ中央には、南北を一直線に貫く水路が横たわる。満潮時には船も通れるそうで、向田から生口島へ行く場合に近道ではある。広大な平地から、時折軽トラックが出入りする。農地の中にはグラウンドゴルフ場があるそうだ。埋め立てで出来上がった入り江は波もなく、ヨットの浮かぶ夕暮れの風景が一層穏やかに見えた。

島内の手入れの行き届いた石仏を見て信仰心を。人とのふれあいに人情を感じた佐木島。春は塔の峰千本桜、夏の海水浴、秋にみかん。見て遊んで食べてという観光の基本がある上で、サイクリング、登山、島内を巡るお大師さんめぐりと、身体を使って楽しめる島でもある。新幹線の駅からも近い、この一周12kmの小さな島には、四季を通じて遊びの素材が詰まっている。立地の良さを活かしたイベントを継続させる佐木島の努力は、親しみやすさを育て、来島者を増やし、実を結んでいるように思われた。

文・写真/ナワタミツル
参考資料/日本の島ガイド シマダス・私の日本地図6 芸予の海

-佐木島 DATA-
◎所在地/広島県三原市
◎面積/8.72k㎡
◎周囲/18.2km

◎宿泊施設/あり
◎お食事処/あり
◎公衆トイレ/各港内長浜海岸と幸神の間、塔の峰にも公衆トイレあり。
◎駐車場/あり
◎島内交通手段/あり
・レンタサイクル(三原港)
◎お店情報/各集落に小規模商店あり
・鷺港近くに産直市場あり
◎備考/各所に自販機があるため、飲み物に困ることはない。

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