『斎島』を写真と紀行文で紹介 | 島プロジェクト

00-M_MG_4372.jpg

ReportNo-01.png斎島
斎灘に浮かぶ風情残る小さな離島
斎島/Itsuki-shima

01_MG_4421.jpg
▲高台に鎮座する蛭児神社は400年の歴史
02_MG_4427.jpg
▲車が走らない島。路地で迷うことはない
03_MG_4463.jpg
▲港の西端から見守る恵美須神社
04_MG_4435.jpg
▲古い波止が残る港に船は少ない
05_MG_4471.jpg
▲手直しされながら、築180年という家屋
06_MG_4428.jpg
▲イノシシ対策の柵が目立つ集落内の畑地
07_MG_4474.jpg
▲島が少なく広々とした斎灘の眺めは爽快
08_MG_4402.jpg
▲石積みと土壁。古い島の空気が残る路地
09MG_4403.jpg
▲どこか懐かしい風景が随所に残る集落内

名前の由来は、斎内親王(伊勢神宮に奉仕する未婚の皇女)より弊料(弊帛料)を賜ったことから。神を斎き祭りし島、神霊宿る島として信仰の対象だったとも伝わる。また、アビ漁が盛んであった島として知られている。アビ漁とはアビ(広島の県鳥)がイカナゴを捕食する習性を利用した漁法で、アビの群れに追われたイカナゴに集まるタイやスズキを釣り上げるという独特なもの。アビの飛来数激減と、手漕ぎの伝馬船の重労働に後継者不足もあり、今は絶えてしまっている。

とびしま海道を伝い、豊島港から高速船『第八同栄丸』で片道330円。途中大崎下島の大浜港へ寄港するが、汽笛の合図を送り、乗客が確認できなければ素通り。一気に斎灘を突っ切る。高速船の爽快感を味わいながら、約17分で人口16人の斎島に着いた。入港時に目に入る建物は、平成7年に閉校した斎小学校跡地に立つ研修宿泊施設『あびの里いつき』。県内唯一というアビ漁の資料展示室を有するが2009年4月から閉館中。訪れた者からすると、眠らせておくには惜しい施設と思われた。

月1回の往診(保健士の健康相談)がある斎島診療所を過ぎ、石の鳥居を潜り蛭児(ひるこ)神社へ向う。石段途中にある鳥居は、芸予地震によるものか、補修の痕が印象深い。趣のある拝殿と本殿を持つ神社に弓射り祭が伝わるが、近年は準備できる人がおらず、行われていないという。弓が関わる神事は瀬戸内の島に多く伝わる。この島なりの神事内容の違いがあるのだろうか。祭りは口伝で引き継がれるもの。今の内に記録なり残しておかないと、途絶えてしまうことになる。

神社の石段を下りる途中で、渡りをする蝶アサギマダラを見かけた。その旅には謎が多く、マーキング調査が行われている。他の蝶と違って鱗粉がほとんど無い翅に、捕獲場所や年月日を記入して放ち、次に見つけた人が捕獲場所、年月日を報告することで移動行程・距離・時間が判明する。2匹(頭)見たが、どちらにも記載は無かった。移動距離が2000kmを越す個体も記録されているアサギマダラ。海を渡ると知っていても、離島で見るのは初めて。思わぬ出会いに感動した。

海沿いの道へ出て視界に広がる港は、かさ上げした古い波止をコンクリートの防潮堤が大きく囲う。沖に見える豊島や大島下島、それを繋ぐ豊浜大橋が、地図で受けた印象よりも近くに感じる。湾内に沈んだ波止から突き出た係船柱があり、港を改修した理由の一端を見た気がした。港の西端には漁で栄えた証といえる恵美須神社が鎮座している。繋がれている船は少なく、現在では漁をしているのは二軒のみ。時期であれば、ひじきを干す漁港らしい風景が見られたことだろう。

港から古そうな屋根の家に向う。話を伺うと藁葺き屋根をトタンで覆った家は築180年で、並ぶ瓦葺きが150年。島の繁栄を見守った証人のような存在と言える。振り返る山は木々に覆われているが、昔は頂き近くまでよく開かれていて、段畑では少ない耕作面積でも高収入が得られる、さやえんどう、除虫菊、みかんが育てられていた。多くの男は船員として島外で働き、島に残る爺ちゃん、婆ちゃん、母ちゃんが畑仕事に携わることから、三ちゃん農業と呼ばれていたそうだ。

島の集落は東西で微妙に分かれている。どちらも集落の中に畑があるが、どれもイノシシ避けの柵で囲まれ、独特な風景を作っていた。海を渡ってきたイノシシが徐々に増え、最近では被害も甚大。畑以外でも掘り返した痕があちこちで見られた。他の離島でもイノシシの被害を耳にする。行政主導で、どうにか駆除できないものだろうか。東西でそれぞれ浜へ通じる道があり、東側からは潮が引くとまな板のような岩礁が現れる真名板浜へ、西側からは西場浜に行くことができる。

西場浜へ向う道の途中に夫婦岩と呼ばれる大小の巨石があり、不思議な空間を作っていた。蛭児神社の御神札が立てられていたが、謂れは分からない。岩を過ぎると道は下りになり浜へ出る。近くに上・下蒲刈島、遠く倉橋島を眺めることができ、視界一杯に広がる斎灘が気持ちが良い。昔は浜のある島の南斜面にも畑が広がっていたという。往時の活気を想像しながら斜面を登り返し、集落内で再び路地巡り。石積み、土・板壁が多く残り雰囲気が良く、飽きさせない魅力がある。

のどかな風景を作る一つ一つに心が休まり、島の置かれた環境、大きさと集落の均衡に『離島らしさ』が溢れる斎島。1日5便あることを活かして喧噪を離れ、自然の音だけに耳を傾け、静かにのんびり過ごしてみるのは如何だろうか。自然観察や写真撮影、散歩しながらお気に入りの場所を見つけて、読書をするのも良いだろうと思う。その時に忘れてはいけないものは、必要な食料と飲料水。そして、生活の場に踏み込んでいるという旅人の謙虚な気持ちを持って出かけたい。

文・写真/ナワタミツル
参考資料/日本の島ガイド シマダス

-斎島DATA-
◎所在地/広島県呉市豊浜町
◎面積/0.70k㎡
◎周囲/4.3km

◎宿泊施設/なし
◎お食事処/なし
◎公衆トイレ/なし
◎駐車場/なし ※豊島港に駐車場あり
◎島内交通手段/なし
◎備考/食物は乗船前に用意が必要
「あびの里いつき」は休館中。
売店・自販機もなし。トイレもないので、
渡航前にちゃんと用を済ませましょう。

PhotoGallery-Jump.png

>>スマートフォンの方はコチラをクリック


斎島map.jpg

◎ 斎島の最新情報はコチラでチェック → 斎島facebook
● 観光情報 & アクセスに関してはコチラをチェック → ひろしま観光ナビ
● 運行ダイヤ & 運賃はコチラでチェック 斎島汽船(株)
※アクセスは、斎島汽船(株)ホームページ内にある『航路マップ』を確認するとわかりやすいと思います。

bk2_prev.gif

bk2_next.gif